オプション取引の秘密を探して
個人があえて信用リスクを負って高金利を目指しても、それでリターンを高めることができないとは言いませんが、個人では効率的に信用リスクを負うことがむずかしいため、できるだけ避けた方がいいと思われます。
株式を買う場合の信用リスクについてもみてみましょう。
信用リスクが高くなった(倒産の危険性が高まった)と思われる企業の株価は下落します。
くわしくは説明しませんが、これは信用リスクに応じてリターンが得られるようにする仕組みだと考えられます。
スクとリターン」の正しい意味と考え方危なくなった分だけ株価がずっと割安になり、その企業が経営危機さえ脱すれば、大儲けできる可能性が高まるからです。
もちろん、そのまま倒産して大損する危険性もあります。
それでも、信用リスクの高さに応じたリターンが得られるところまで株価が下がるというのが、基本的な仕組みです。
また、信用リスクを知るための情報として重宝されていた格付け(財務格付け)″が、じつはあまり役に立たないということがわかってきました。
そこで、債券などの信用リスクの評価においても、株価から得られる情報を活用する方法が、信用リスク評価の新手法として主流のひとつになってきました。
つまり、株式投資をおこなう個人も、株価の動きを定期的にチェックし、大きな値下がりがあった場合には、信用リスクが高まった可能性などを検討して、運用を見直すといった作業をしていれば、それなりに信用リスクの管理ができるということです。
そして、最初から信用リスクが高い株式を買う場合にも、それに応じたリターンは期待できるでしょう。
*ここでの説明は、上場企業などの流動性の高い株式を買うことが前提になっています。
つぎに述べる流動性リスクの話とも関係しますが、いつでも売れるということが大きいのです。
たとえば、国が借金をするときに発行する国債と、地方自治体が借金をするときに発行する地方債を比較してみましょう。
どちらも、事実上は日本国政府が返済を保証しています。
だから信用リスクには差がないのですが、地方債の方が少しだけ高い金利がつきます。
これは主に、地方債の方が、満期前に売買する際の流動性が低いからです。
だから、5年ものの国債と地方債があるとして、5年間絶対に売らないで満期まで保有するつもりなら、金利が高い地方債を買う方が得です(少しの得でしかありませんが)。
*制度変更によって、国が地方自治体の借金の保証をしなくなるという可能性もあります。
本文では説明の都合上省きましたが、国債と地方債の金利の差には、この意味での信用リスクも反映されているとの指摘もあります。
金融機関であれば、流動性リスクの高い資産を買うことで、より高い金利を得るやり方は、リターンを高めるのに有効かもしれません。
ところが筆者は、個人の場合には、流動性リスクを引き受けても、平均的には損なだけでリターンは高まらない(むしろ、必ずリターンは下がる)、と考えています。
確かに、個人であっても、5年間まったく使うつもりのないおカネを運用するとしたら、流動性リスクの高い地方債を買うことで、国債より高い金利を得ることができます。
マネー雑誌などで、これに類似した運用を勧める記事をときどきみかけます。
しかし、筆者はお勧めしません。
この場合、流動性リスクを負うことで得られる金利差はごくわずかです。
その一方で、予定を変更して満期前に地方債を売らざるをえないという事態は、絶対に起こりえないのでしょうか。
大きな病気にかかるとか、地震などの災害にあうとか、自分でなくても家族が急におカネを必要とする状況に陥るとか、予想もしなかった何かが生じておカネが必要になることはありうるはずです。
そんなときに、流動性の低い地方債を売ろうとすると、購入先の金融機関を相手に売るしかなく、そのため割高な手数料を取られます。
相手の金融機関としても、市場での売却がむずかしいのですから、その分を織り込み、さらに事務コストと自らの利益を上乗せして、たっぷりと手数料を取るのは、ビジネスとして当然のことでしょう(少なくとも筆者は非難しません)。
金融機関と比べたときの個人の弱点は、不測の事態で急におカネが必要になったときの、おカネを借りる金利の高さにあります。
銀行であれば、急に500万円を1年間借りるとしても、金融市場で銀行同士の貸し借りが恒常的におこなわれていますから、そこで成立して正しい意味と考え方いる金利で500万円を借りればすみます。
他方、個人であれば、急に500万円を借りようとすると、かなりの高金利を要求されるでしょう。
流動性リスクを引き受けるかどうかを考えるときに、この差は大きいのです。
個人であっても、金融機関や優良企業並みの低金利で借金ができるのであれば、それで、もし地方債を満期前に売却するときの手数料(売却コスト)が高すぎるなら、地方債を売らずに借金でおカネを用意し、地方債の満期が来たら借金を返すという方法で、損を小さくできるかもしれません。
現実には、個人が借金をするときの金利は高いので、特殊な場合でないと、この方法は通用しません。
つまり、流動性リスクを引き受けたあと、実際に流動性リスクが原因で損失を被りそうになったときに、個人は金融機関よりもずっと大きな損失を被る事態に陥りやすいのです。
その一方で、流動性リスクの代償として得られるリターンの大きさは、たいてい、金融機関がリスクを負う場合を前提にして決まっているでしょう。
したがって筆者は?個人にとって、流動性リスクは引き受けても代償が得られない、つまり悪玉リスクだと考えます。
例外はあるのかもしれませんが、一般的なアドバイスとしては、個人は流動性リスクを避けるべきでしょう。
結局、個人が資産運用でのリターンを高めたければ、株価や金利などの価格変動リスクを負うことが必要です。
これを読んで「そんなこと最初からわかっている」とつぶやいた読者もいるでしょうが、むしろ、他のタイプのリスク(信用リスクや流動性リスクなど)を過大に負わないように気をつけてくださいということでした。
「外貨で運用」の広告コストの比較第五章234ネット銀行の強み前章で、金融商品のリターンを評価する上では、インフレ率とコスト(手数料など)を忘れないことが大切だと述べました。
その格好の題材が、外貨預金などの外貨運用商品です。
一般的な外貨預金は、とにかく為替手数料(両替手数料)が高すぎて、資産運用商品としては非常に不利だという評価でした。
ここで改めて、外貨預金の為替手数料について考えてみましょう。
銀行としては重要な収益源ですから、引き下げたくないのは当然です。
それでも各銀行が外貨預金の獲得競争をしているのですから、競争原理によって為替手数料が下がるという現象が起こらないのはなぜか、疑問に思う人もいるでしょう。
日本で金融自由化が始まったころ(約20年前)の、1ドルU250円前後の時代でも往復2円/ドルだった為替手数料が、1ドルU100円前後になっても、同じ往復2円/ドルなのです。
前者なら元本の0.8%ですが、後者なら元本の2%です。
為替手数料は大幅に値上がりしたことになりますから、かなり批判を受けています。
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